北野貴之 当時20歳

新潟アルビレックスに加入後、2003年2月1日からトップチームとブラジルキャンプに参加させていただきました。

2003年2月24日から、アルビレックスの新人4名がキャンプ終了後も引き続きブラジルに滞在し、アトレチコパラナエンセ(ブラジル)の練習に参加させてもらいました。

日本人は新人4名。当時20歳。

コミニュケ―ションをとるにも、1冊の翻訳本だけ。

親元から離れて暮らすのも初めての経験でした。

ここで心身ともにプロとして、人間としての基礎がつくられました。

15年もの間、選手としていられたのは、この約7ヶ月に及ぶブラジル生活がとても大きかった。

サッカー王国で感じた、サッカーの技術はもちろん、体つくり、心の鍛錬。何よりサッカーに対するハングリー精神、家族愛。

全く、違う文化に触れた約7ヶ月をご紹介します。

北野貴之 アトレチコパラナエンセ

練習に参加したアトレチコパラナエンセ(ブラジル)のジュニオールは、20歳までが所属できるカテゴリーです。

生活宿舎・練習場は、とても素晴らしく、トップチームから全てのカテゴリーの子がここで生活を共にします。

・トップチーム

・20以下(Júnior ジュニオール )

・17以下(Juvenil ジュヴェニウ)

・15以下(Infantil インファンチウ)

 

15歳以下の子や各カテゴリーの子達は、トップチームの練習時間になるとグランドの端に座りながら、トップチームの練習を真剣な眼差しで見ていて、未来のトップになる決意を固めるのです。すぐそこに未来になりたい姿の人が近くにいるのです。

 

北野貴之 ブラジル修行

この環境こそが、ブラジルが強くなる理由かと。

ブラジル代表やトップクラスの練習を身近にみる。

試合前日になるとトップの選手全員がここに泊まって、ここから試合会場へと向かいます。

トップチームの面々は、試合・練習はもちろん、礼儀、マナーなど、下位チームのお手本になっています。

常に同じ屋根の下でいることにより、トップチームの選手はプレー以外でもお手本となり、人間としての一流が求められます。

 

 

北野貴之 ブラジル修行

私がいた、ジュニオールの練習は、午前2時間と午後2時間の2回。

練習が終わると、野外プールに飛び込んでクールダウン。

その後は食事。睡眠の日々。

サッカーをする環境としては、ものすごく充実しています。

 

練習以外の時間は自由時間ですが、ウェイトトレーニングにあてる者が多数。午後の練習の後は学校に行きます。

ブラジルはチームに所属すると、宿泊・食事はもちろん、

学校の費用もチームが全額負担しますので、チームに入ることで、家族を助けることにもなるのです。

この小さい頃からの環境が、ハングリー精神を養う原点なのです。

初めてのジュニオールの練習で、度肝を抜かれたのは、

シュートの威力が違う!トラップの精度が違う!でした。

トップチームのメンバーはどこのポジションにいても、昔は皆点取りのフォワードだったこともうなずけます。

 

北野貴之 ブラジル修行

練習中には、一切笑顔がありません。

今日で契約解除というのも、日常的ですから、皆、練習から真剣そのもの。練習で出来ない事は、試合で出来るわけがない。という事も言われ。練習とはいえない実践以上に、相手に対してもバチバチなハードなトレーニングです。

 

 ゴールキーパーとして、FW大国ブラジルの、すごい早くて重い威力のあるシュート、精度の高いシュートを毎日見せつけられたのは、貴重な経験でした。

中途半端なセーブでは、怪我をするくらいの威力です。

シュートもそうですが、本気で体ごと突っ込んでくるので、指、腕ごと、もちろん体も吹っ飛ばされます。

練習から真剣さと集中力を切らさないのも、この試合さながらのハードな毎日があったからこそです

 

北野貴之 ブラジル修行

急に、いなくなるなる子もいました。

昨日で急にジュニオールを、ジュヴェニウを契約解除された。と聞かされました。

契約解除されるという事は、家に帰り、親に学費を払ってもらわなくてはならなくなる。という事。

ブラジルは貧富の差が大きいので、家に帰れば学校に行けなくなる子もいます。

サッカーに真剣なのは、サッカーができることで、人生をも決めてしまうということを小さいながら、全ての子達が感じているのです。

サッカーで生き抜くことが、全ての環境を勝ち取ることができることを知っているから、日々真剣勝負なのです。

 

 

 

北野貴之 ブラジル修行

2003年3月リオのカーニバル期間は、ブラジル中が休みです。

ジュニオールの練習も1週間休み。

ジュニオール同僚に招かれて、実家に誘っていただきました。

ブログのほっかものバック画像は、この時の画像です。

初心忘れるべからず。と思い返すためです。

 

彼の実家では、一度も逢った事が無い日本人の私を、

ママがHUGして、そのあとにブラジルでいうベイジョ(頬と頬を左右に合わせてキスの音をさせる)。

パパはHUGを、そのあとに熱い握手をします。

これが、ブラジルの家族愛の強さ。スキンシップです。

日本を離れ、親元から離れて、言葉もうまく伝わらない異国の地で満面の笑顔でハグして、ママはベイジョ。パパは握手。

どこの家族に逢っても、家族の友人でも、この愛の形で迎えていただきました。とてもありがたくて、暖かくて、心が落ち着きました。どの人からも伝わる愛、涙が溢れそうでした。

別れの時は更にグッときます。

スキンシップ、愛はこうやって伝えるものだと、素晴らしい愛を肌で教えてもらいました。

 

プロ契約をしていただいてすぐに本場ブラジルで生活させていただいた経験は、なにものにも代えられない貴重な体験でした。

今日までの北野貴之としてのプロサッカー選手としての基礎・人間は、ここで作られたと言っても過言ではありません。

 

いままでも、そしてこれからもブラジルでの初心・溢れた涙を忘れません。ブラジルで経験した感動・愛は、日本で出逢う全ての方に、感動と愛を伝える事ができるよう、並々精進して歩みたいと思います。